
あること ← ないこと
街への参加で「ない」街を「ある」街へ
「ない街」は、現実と虚構の境界を探る体験型インスタレーションである。存在しない都市を舞台に、公共物や制度を提示し、来場者がそれらに関わることで、フィクションがあたかも実在するかのように立ち上がる。この過程を通じて、社会に参加するとはどういうことか、また、私たちが現実と感じるものがどのように構築されていくのかを問い直す。
来場者は、まず街を散策するように会場内を歩き、那異市に関する掲示物や映像を観覧することができる。次に、市役所での手続きや住民投票など、展示に用意された「市民としての行為」に参加することが可能である。職員との会話や他の来場者との交流を通じて、那異市は徐々に現実的な存在として立ち現れる。最終的に、来場者が自身の言葉や意見を空間に残すことで、展示空間と参加者が一体となり、架空の街を共に形づくる体験が生まれる。