
あること ↓ ないこと
あることないこと、剥いだカタチ
話す。囁く。叫ぶ。笑う。 どんな「声」も、等しく空気を伝播していく……はずなのだ。 けれども、私たちの社会を伝う「声」は、立場や権威やあることないことを背負って、等価ではなくなっていく。 Voice Duneは、声が記録される装置ではない。 切断されたワイヤーが砂丘に堆積した瞬間、記録は無数のワイヤーの一部となる。 意味も、文脈も、個々の識別性も剥がれた「声」がワイヤーとして象られ、やがてひとつの巨大なかたちとなって、静かに積み重なっていく。
本作品では、体験者がマイクに吹き込んだ音声がリアルタイムに解析され、その声固有の波形へと変換される。ワイヤー曲げ装置はそのデータに基づき、一本の金属ワイヤーを精密に折り曲げては切断を繰り返す。体験者は、自身の声が物理的なワイヤーへと姿を変え、眼前に広がる砂丘の一部として静かに堆積していく様を目の当たりにするのである。